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向日葵
第9章 セカンドセックス
 服に着替え、互いに気まづい雰囲気の中、掛ける言葉を探していた。

 「白石さん、紅茶は飲めますか?」

 「あぁ…」

 「じゃあ、淹れますね。
座って待っていて下さい」

 蛇口を捻り、勢いよく出てきた水をやかんの中に閉じ込めて火をかけた。
小さな食器棚から不似合いな葉月から貰った豪華なティーセットを出した。


 「本当はインスタントコーヒー派なんです。
粉末に沸いたお湯を注いで手軽に飲めてしまう味が好きだし、ホッとするんです。

 でも、手間暇掛けて優雅に香りを楽しむ紅茶も好きになりました。

 私の好きになった女性は、そんな時間を惜しみになく掛けて、最高の味を惹き出そうとする人です。

 アールグレイの紅茶の良さなんて、彼女と出会ってなかったら、知らずにいたかもしれません。

 インスタントコーヒーが私なら、彼女は手間暇掛けて優雅な香りと味を惹き出して貰える環境に育ったお嬢様なんです。

 所詮、身分違いな恋でした。

 庶民の私には手が届かない。
ましてやビアンの私では釣り合いも取れません。

 残酷だと思いました。
初めから別れは決まっていた恋をして、必死になりました。
それでも、私には必要でした」

 

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