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続「辿り着く 先には」
第2章 『堕落』

脳逝きを繰り返されると、身体が持たない。聖を欲しがり過ぎておかしくなりそうだった。痙攣をしている間は必ず、抱き締めてくれる。その間だけは、絶対空間をくれる安心感が胸を埋めた。呼吸が整ってきて腕の中で囁く絢音。
「こんなの、狡いわ。聖の支配下じゃない。」
「支配されていればええ。何が不満や?」
「だって、帰らなければならないのに。」
「帰ったって、心は離さへん。」
「そんなの、狡い。いつだって、聖は全てを奪って。なのに、私の心は急速な変化でへとへとになるわ。」
「へとへとになって、常に僕の事だけ考えてたらええんや。さて、そろそろ行こうか。絢音も逝かせたし、満足したやろ。」
頬を膨らませながら、その膝から降りた。身長差があり過ぎる二人。聖は185、絢音は156、頭一個半分は違う。最初に思ったキリンを思い出して笑った。それに、ん?と言った顔をしながらもしゃがんでくれる。
首に手を回して引き寄せ、今度は絢音から唇を重ねた。腰に手が回される。また激しい口付けが降りそそがない内に離れ、鞄を持った。緑のワンピースに軽くショールを羽織り、靴はサンダルを選んだ。
軽く手を取り、回される。ワンピースの裾が緩やかに揺れた。猫のようなしなやかな動きと、悪戯を考えている顔を目にしてその小悪魔の様な絢音に振り回されているのは自分の方なのかもしれないと思ってはいたが、口に出す聖ではなかった。
外は五月の日差しにしては暑く、サングラスをかけて車に乗り込んだ絢音。ゆっくりとした、出発だった。
「琵琶湖まではどれくらい?」
「すぐやよ、15分も走れば着く。今日は天気がいいし、綺麗やろ。」運転している姿を昨日も見ていたはずなのに、ついつい目がいく。その時に、ふと目に入った時計。
「ロレックス?重そうね。」ああといった顔でちらりとそれを目にした聖。
「父から貰ったものや、もう本当にこれしか残ってないなぁ。」
「おじさまのこと?」
「そうやな、家はもう無いし全ては奪われた。思い出の残っていたアルバムも、自分の部屋もみんな。」
車の空気が一瞬にして重たくなってしまった。
「ごめんなさい、思い出させて。」気まずそうに呟いた絢音に、首を降る聖。
「もう、過去や。無くなったものは返らん。」
「こんなの、狡いわ。聖の支配下じゃない。」
「支配されていればええ。何が不満や?」
「だって、帰らなければならないのに。」
「帰ったって、心は離さへん。」
「そんなの、狡い。いつだって、聖は全てを奪って。なのに、私の心は急速な変化でへとへとになるわ。」
「へとへとになって、常に僕の事だけ考えてたらええんや。さて、そろそろ行こうか。絢音も逝かせたし、満足したやろ。」
頬を膨らませながら、その膝から降りた。身長差があり過ぎる二人。聖は185、絢音は156、頭一個半分は違う。最初に思ったキリンを思い出して笑った。それに、ん?と言った顔をしながらもしゃがんでくれる。
首に手を回して引き寄せ、今度は絢音から唇を重ねた。腰に手が回される。また激しい口付けが降りそそがない内に離れ、鞄を持った。緑のワンピースに軽くショールを羽織り、靴はサンダルを選んだ。
軽く手を取り、回される。ワンピースの裾が緩やかに揺れた。猫のようなしなやかな動きと、悪戯を考えている顔を目にしてその小悪魔の様な絢音に振り回されているのは自分の方なのかもしれないと思ってはいたが、口に出す聖ではなかった。
外は五月の日差しにしては暑く、サングラスをかけて車に乗り込んだ絢音。ゆっくりとした、出発だった。
「琵琶湖まではどれくらい?」
「すぐやよ、15分も走れば着く。今日は天気がいいし、綺麗やろ。」運転している姿を昨日も見ていたはずなのに、ついつい目がいく。その時に、ふと目に入った時計。
「ロレックス?重そうね。」ああといった顔でちらりとそれを目にした聖。
「父から貰ったものや、もう本当にこれしか残ってないなぁ。」
「おじさまのこと?」
「そうやな、家はもう無いし全ては奪われた。思い出の残っていたアルバムも、自分の部屋もみんな。」
車の空気が一瞬にして重たくなってしまった。
「ごめんなさい、思い出させて。」気まずそうに呟いた絢音に、首を降る聖。
「もう、過去や。無くなったものは返らん。」

