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明治鬼恋慕
第11章 夜叉



冬の訪れとともに、ひとつの首が飛んだ。





──




 タコに骨なし

 ナマコに目なし

 ベニ屋のおっさん 首がない








幕藩時代より、筆頭家老とくんで米を買い占めるなど悪徳商人として人々の恨みを集めていた又左衛門は、こうして強欲なその命を散らした。


動かぬ首なしの男の前には、刀を振るった少年が佇む。


上身を露に、はだけた着物を辛うじて纏っただけの立ち姿。


確かにそこには…人在らざる色気があった。


食い縛った歯の隙間から熱い息を吐き出し、苦し気に歪んだその形相はまさに鬼の如し。


しかし…それでも


大きく見開かれた彼の瞳だけは、恐怖で震え、そして泣いていた…──小さな子供のように。


鬼の心になりきれない自分に対して悲鳴をあげていたのだ。


どうしても、彼はどうしても、人間に対して冷酷になりきれなかったから。









───…






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