この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
明治鬼恋慕
第3章 擬態
傷だらけの彼はどう見ても " 訳あり " で、何処から来たのかと尋ねるような野暮はできなかった。
せめて名前を聞くと、少し迷った後で
『 ……リュウ 』
と呟いた。
焔来は後日、千代の父である名主に頼み込み、リュウを村に置いてもらう許可を得た。
そして自分が与えられている家に、リュウと共に住むことになったのだ。
当時のリュウはどこからどう見ても美少女で、彼が自分を「僕」と呼ぶ事だけが唯一、彼を男にしていた。
それでも剣術の心得がある彼は焔来よりよほど強く、馬鹿にする村の子供たちはすぐに影を潜めたのだが…。
──思えば二人は
互いが出会う前の事を何も知らない。
自分から語るわけでもないし、聞き出そうともしない。
だが彼等の絆は何よりも深かった。
既に二人の関係は何物にも代えがたい宝である。
二人でこの世を生き延びる
それを誓ったからこそ──
彼等の身体は、男になることを選んだのだから。
──…