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明治鬼恋慕
第5章 出立
いよいよ否定できない昂りに翻弄されながら、焔来は眉を寄せ…喉の奥で唸った。
リュウも同じく余裕のない表情で彼を追いつめていく。
「…僕は…!! 焔来が好き。ねぇ、君は…──?」
「…ハァっ…ハァっ…!!」
欲望よりも情を感じるリュウの艶めいた声が、鼓膜に届いて背筋をぞくりと震わす。
そうだ…ここまで身体が反応するのは
相手がリュウだからだ。他の誰かじゃこんな醜態をさらさない。
そんなのとっくに知っている…!
──だが、自分のこれは「好き」という感情で合っているのか?
焔来にはそれがわからなかった。
「…アっ─!! …リュウは、特別、だ……!」
「…っ…焔来…」
「好きとか…ッ…よくわかんねぇ! けど、ハァ…っ!…お前は俺にとって特別だっ」
精一杯の声量で返してやる。
だがリュウの責めが止まるわけではない。
それでも…焔来を見つめる美しい緑色の虹彩が、よけいに潤んだ気がした。
不安げだった薄茶の瞳が──嬉しそうに輝いた気がした。