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明治鬼恋慕
第6章 山越え
焔来とリュウの和やかな空気を切り裂いたのは、ひどく下卑た…この風景に似合わない声だった。
「……!?」
「こんな山んなかで何してんだあ?」
森から出てきたのはひとりではなく複数だった。
よれた着物に身を包む人間の男たち。
皆、手に手に鞘のない刀を持って、二人の前に集まってくる。
「…野党か」
リュウは首飾りを作るのを止めると、眉をひそめて呟いた。
ニタニタと笑いながら現れた野党( ヤトウ )のひとりが、リュウを目にしてヒュウと口笛を鳴らす。
「女もいるじゃねぇか!」
「しかも上玉だぜ?」
「女…」
「へへっ、へへっ、久しぶりの女だ」
周りからも歓喜の声が立て続いた。
“ 何だこいつら…!? リュウを女と思ってるのか ”
野党等の思い違いを内心、笑いながら、焔来はこの状況に苛立った。
奴らの視線が舐めるようにリュウに向けられているのが我慢ならない。