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貸し出し遊戯
第29章 永遠の愛 クリムト
蘭は悠介の肩口に頭をやり、その腕の中に収まった。
悠介の腕の中で蘭はこんなことを考えていた・・・
セックスは常に死の匂いがする。
生に謳歌して愛の只中にあればあるほど、死は色濃くその隣合わせに、常に甘美な香りと、切ない狂おしさの狂気を漂わせ私達を誘う。
エロスが生なら、その対極にあり、常に隙を狙って口を開けて私達を誘う死、タナトス。
彼女の頭の中では、クリムトの様々な画が消えては浮かび、また浮かんでは消えというように巡っていた。
蘭がクリムトを知ったのは、ジュリア・ロバーツ主演の映画『愛の選択』だった。
作中でクリムトの死の匂いがする官能画『Kiss─接吻』などが効果的に使われていて、彼女はそれからクリムトをとても愛していた。
『Kiss─接吻』、見た瞬間に心を奪われた。
蘭は目が逸らせなかった・・・
一枚の画がこんなにも人の心を捉える 、それは衝撃の出会いだった。
力強くしっかりと女性を支え包み込む男性。
それと対をなすかのような女性の柔らかな身のすくめ方。
愛しいものをひたすら優しくすくい上げる男性の手。
そして黄金の輝きの中で男性に身を任せる女性の表情には「幸せ」が満ち溢れている。
まさに、官能、そのものであった。