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貸し出し遊戯
第29章 永遠の愛 クリムト
しかし、 この画からはその幸せの永遠さより、死の匂いが色濃く感じられる。
「幸せ」とは全く逆の感覚。
女性の幸せとは対照的に、この画全体を支配しているのは、幸せが永遠に続く事が決して無いと分かっているが故の永遠の一瞬、
それをとどめておきたいけれどもそれが無理と分かっているが故の哀しみ。
もっとはっきり言うなれば、 この悲しみは死と言い換えても良いかもしれない。
そう、この画にはある種の死の香りが漂っている、それは永遠の愛は死を持って完結されることを描いているからであろう。
断崖のような危険な場所で2人は「最後のキス」をしているようにすら見受けられる。
そう見ると、崖を埋め尽くしている花々も二人を祝福しているというよりは、むしろ二人を哀しげに見守っている様にすら見える。
そして2人を取り巻いている金色に輝く空は「悦びの世界への入り口」というよりは、むしろ「死の世界への入り口」にすら見える。
それはセックスが内包している、誰もが少なからず感じ取っている、性そのものであろう・・・
幼い頃、病弱で、生への滞在が少なかった蘭には死はとても身近な隣人だったのである。