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タワーマンションの恋人
第1章 * はじまり
「相手って…。その、性欲、の…?」
「まぁ、簡潔言えばそうですね。」
顔色ひとつ変えずそんなことを言うから、少しだけゾッとする。
「…要するに芸能人専門のソープってことですよね?」
「そんな、人聞きが悪い。擬似恋愛をして欲しいんだよ、うちの子たちと。」
「擬似…恋愛?」
良くもそんな体の良い言葉を出したな、と怪訝に思いながら聞き返せばまた彼は意地悪く笑ってから、話し始めた。
「彼らは、恋愛すらロクに出来ない環境だと思って下さい。あなたには、彼らの恋人になってほしい。」
「なんで、わたしが…?」
突然持ち掛けられた話に半ばパニックになりながら聞く。
「この仕事は、誰でもいい訳じゃない。教養もある程度ないとこなせない。こちらの契約もしっかり理解してもらわないとならないしね。」
「教養なんて…わたし、」
「この前来店した時にあなたの話し方、所作、話の内容…きっと賢い方なんだと思ったんでね。」
そう言って、わたしの指先をそっと掴んだ。
「しっかり、1人1人と恋愛をするように接して欲しい。性欲だけじゃなく、そうだな…一緒に食事したり、お喋りしたり。惚れさせてほしいんです。まさに、擬似恋愛、でしょ?」
「惚れさせる…?仮にも、相手は芸能人ですよ、ね?」
「ええ。ただ、華さん。あなたならそれが出来る。そう思ったから、今こうして口説いてます。」
気がつけば、もうワンセットが終わろうとしていた。
「もし、少しでも興味があれば、ここに連絡くださいね。」
そう言って、名刺を指差した。
「もし華さんがうちで働いてくれるなら、この店の5倍は出せると思います。」
そう言い残して、彼は席を立った。
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