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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第9章 「雨上がり」
雷鳴が鳴り響く度に珍田一は凛を力強く抱きしめた
雨に濡れた雛鳥のように震えていた凛の身体が、少しづつ落ち着きを取り戻し始めていた
凛がゆっくり顔を上げる
「お父さんの服のお陰ですね…」
そう言うと珍田一は凛を見つめ僅かに微笑んだ
凛の左目から溢れた涙が、頬の表面に沿って一筋の曲線を描き…やがて細い顎先から滴り落ちた
珍田一は凛に吸い寄せられていった…
白く透き通った肌の上に落ちた桜の花弁を思わせる、僅かに開きかかった薄い唇に
凛の頬が…耳が…
僅かに赤味を増していった
凛の右手と珍田一の左手は指を絡めて重ねられている
小柄な珍田一の体躯は凛と殆ど変わらない…
しかし、凛の細い身体が珍田一の背中を大きく見せていた
時が経つのを忘れ、いつまでも唇を重ね続ける2人
感じるのはお互いの体温と息遣い…そして自らの鼓動
まるで2人だけが深い森の奥に取り残されてしまったようだった
誰にも邪魔されることのない深い森の奥に…