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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第12章 「逃げ水」
珍法は手を顎に当てて、何かを思い出そうと考え込んでいる
「何処の出版社だか記憶にありませんか?」
「ちょっと待ってくださいよ…確かその郷土誌がウチにもあったような気がするんじゃが…」
「え…?そ、それは本当ですか!」
期待は大きく膨らんだ
しかし大きく膨らんでしまったが故に落胆も大きかった…
和尚は自宅の押し入れや土蔵…思いつく限り探してくれたが、遂に見つかる事は無かった
「おかしいなぁ…確かにあったはずなんじゃが、捨ててしまったんじゃろうか…」
「その郷土誌をお持ちなのは和尚さんだけなのでしょうか…?」
「う~ん…あれは確か、トシさんの知り合いが書いた記事が載っているっていうんで、トシさんがワシの所にも一部もってきてくれたんですわ…」
「ということは、トシさんのお宅にも…」
「ひょっとしたらあるかもしれませんのぅ」
「珍田一さん…戻りますかね?」
「そうするしかありません…」
二人は和尚に礼を言い、陰核寺を後にすると、再び内藤家へ向かった…
もし歌詞の続きがわかれば、次の犯行を食い止められるかもしれない
続きさえわかれば、犯人の意図している事が理解できるかもしれない
珍田一は追いかけても追いかけても逃げ水のように目の前から遠ざかる謎を前に焦りを隠せなかった…