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うさぎ×狼×純愛lesson Sweet Serenade
第2章 …01

ギシッと音をたてて、ベッドが軋む。
私は家に着くなり自室に向かう。心配した執事に後ろから声をかけられたが、私の頭の中はそれ所ではなかった。行儀が悪いけれど机に鞄をほおり投げ、ベッドに寝転がると、ふかふかの枕に顔を埋めた。

「………」

何、何なのあれは!
思い出すのは、夕日に照らされた教室で、キスを交わし合う2人の姿。ふわりと舞い上がるカーテンが2人を包み、それはまるで、ドラマのワンシーンのようだった。

けれど…。

顔に熱が集まる。
オレンジ色に艶やかに染まる黒髪は風に流され、薄い眼鏡の奥には切れ長の二重と、黒い瞳。白い肌は第2ボタンまで外された首筋から鎖骨へと。その整った顔立ちとスラリと伸びた手足と…。生まれて初めて、男の人が綺麗だと思った。確か、彼の名前は柏木 誠。柏木グループの御曹司で、容姿端麗、眉目秀麗。ゆえに女子からの告白が耐えないのだとか。友人からの話を、何となく聞いていたのを思い出す。友人と言えば…。まだ、LINEのチェックをしていない。

「…あれ?」

無い。鞄を探ってもひっくり返しても、スマホが出て来ないのだ。どくどくと嫌な方向に胸が鳴る。血の気が引いて、頭から冷水を被ったような感覚に見舞われる。そうだった。あの時、スマホを取りに行ったんだった。
けれどまぁ一応ロックもかけているし、大丈夫だろうと、安易な考えでいた私に悲劇にも似た出来事が起きようとは、この時の私は思いもしなかったのだ。

次の日、学校に登校すれば。

「ちょっと紗雪!、何で昨日返事くれなかったのよ」

と、友人に些か責められたが、学校にスマホを忘れたと話せば理解して貰えた。スマホを取りに行って忘れて帰って来るとは、自分でも予想出来なかった。しかし、机の上に置いてあったスマホが見当たらない。もしかしたら、見回りをしていた守衛さんが預かっているかも知れない。後で先生に聞いて見よう。そう思った時。

「小笠原さん、ちょっと今いいかな?」

当たり障りの無い声色で、柏木君に背後から問いかけられた。でも、そこでふと、違和感を感じた。昨日の柏木君は何だか冷たい雰囲気だったが、今ではその逆、フワフワした好青年と言ったギャップに、私は違和感を覚えた。
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