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不知夜月(いざよいづき)の夜に――
第2章 三日月
『やぁ!また来たんだね』


出来るだけ明るく声を掛ける


すると
カウンター席で俯いてた彼女は
大袈裟なほど驚いて
ガタンと音を発てて椅子から立ち上がった


『こ…こんにちはっ』


ペコリと頭を下げて
上目で僕の顔を見上げる


その仕草が可愛くて
僕を自然に笑顔にした


『元気だった?』


元気な訳無いよな…
失恋の辛さは
そう簡単には癒えるわけ無いってことくらい
良くわかってたけど
慰めの言葉は見付からなかった


『元気です
…というか……
ここに来ると元気になれる気がして…
仕事の帰りに
ここに寄り道するのが
日課になりつつあります』


相変わらず小さな声で
ハニカミながら彼女は言った


『近いの?家』


『はい
…いえ…え…っと……2駅先です…』


『…!?
なら…職場が近くなの?』


『…2駅前です』


『…前なんだ…
じゃあ わざわざ寄り道?』


彼女はハニカミながらコクンと頷いた


僕は意外な彼女の行動力に
思わず吹き出していた




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