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不知夜月(いざよいづき)の夜に――
第2章 三日月
ブレンドコーヒーを買って彼女の隣に座る


『あなたは…どうしてここに?』


目線を僕の洋服に向けたまま聞く


『僕のアパートこの近くなんだ
あ…服?
これでも仕事の帰りでね
クールビズってやつ
センスも何もないね(笑)』


クールビズとはいえ
これじゃただの普段着みたいだもんな
白のポロシャツに
ベージュのチノパン
この前と大して違わない


『いえ…
そういう訳じゃ無くて…
あなたもここに良く来るんですか?』


常連さんと思っているようだ


『いや 偶然にずっと俯いてる君を見つけて…
大丈夫かなと…』


心配してたのに
彼女はにこりと微笑んで
テーブルのコーヒーカップを指差した


『ふふっ
飲んでしまうのが勿体無くて』


見るとカップの中に
葉っぱが浮かんでいた
いや これ…何とかアートだ


『ラテアート
葉っぱの上に小さくハートも書いてあって
可愛くてずっと見ていたんです』


そうだ
ラテアートだ


彼女はまた あの笑顔で僕を見た


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