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不知夜月(いざよいづき)の夜に――
第1章 新月
5分 否 10分
あれだけ降っていた雨が
街路樹の木から滴り落ちる雨垂れを残して
嘘のように止んだ
彼女はテーブルのコーヒーカップに
時々手を添えては放し
一口も飲まない
『珈琲…
好きじゃ無かったんだ…
紅茶の方が良かった?』
雨の音がすっかり聴こえなくなった頃
君に聞いた
『……なの…』
『ん?何?』
やっぱり静かな声で話す
『私 猫舌なの』
『猫舌?
そうか猫舌なのか!』
無駄に心配していた自分が可笑しくなって
クスッと笑った
笑う僕を見て
彼女も恥ずかしそうに微笑む
それまでの哀しげな表情が
一度に華やいだ
『僕も2週間前に失恋したんだ』
彼女の顔がまた曇った
『あなたも…?』
そう尋ねた後一口珈琲を飲んだ
『苦…』
そうだね
恋を失った者同士
二人で飲んだあの日の珈琲は
何時もよりとても苦い味がしたね
雨上がりの街を
雲の切れ間からうっすらと見える太陽が
オレンジ色に染めていった
あれだけ降っていた雨が
街路樹の木から滴り落ちる雨垂れを残して
嘘のように止んだ
彼女はテーブルのコーヒーカップに
時々手を添えては放し
一口も飲まない
『珈琲…
好きじゃ無かったんだ…
紅茶の方が良かった?』
雨の音がすっかり聴こえなくなった頃
君に聞いた
『……なの…』
『ん?何?』
やっぱり静かな声で話す
『私 猫舌なの』
『猫舌?
そうか猫舌なのか!』
無駄に心配していた自分が可笑しくなって
クスッと笑った
笑う僕を見て
彼女も恥ずかしそうに微笑む
それまでの哀しげな表情が
一度に華やいだ
『僕も2週間前に失恋したんだ』
彼女の顔がまた曇った
『あなたも…?』
そう尋ねた後一口珈琲を飲んだ
『苦…』
そうだね
恋を失った者同士
二人で飲んだあの日の珈琲は
何時もよりとても苦い味がしたね
雨上がりの街を
雲の切れ間からうっすらと見える太陽が
オレンジ色に染めていった