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すこし歪な愛の形
第1章 すこし歪な愛の形
――女という生き物は、皆可愛い。男は女にはなれない、だから男は女を敬愛し、大好きになるのだ――
可愛いものが好き。これって、何も悪い事じゃないよね?
「可愛いだけのキャラクターなんて、いらないんだって」
ご飯をもりもり食べながら愚痴るちーちゃんは、ちょっと怖い。女の子らしいぷるんとした唇は、白米をがんがん貪っていく。お箸にぶっ刺した煮玉子も、まあるいまんまの大根も、からっと消える。
僕は思う。おでんとご飯は、相性がよくない。
「あたし、才能ないのかな。もう何回ダメ出しされたか分かんないよ。もう、疲れた」
「ちーちゃん、お茶飲む? 僕、お茶飲みたいな」
「ん、何がいい?」
「今日はねー、ほうじ茶」
ちーちゃんはお茶碗をついでに片付けて、お茶を淹れてくれる。食事の後のお茶。ビールも好きだけど、ちーちゃんと一緒の日はお茶がいい。
「先輩に聞いたの。可愛いだけじゃ駄目なら、どうすればいいのか」
「ちーちゃん、おせんべない?」
「ご飯食べてすぐでしょ、駄目。それでね、先輩が言ったのよ。自分で分からないなら、イラストレーターなんてやめなさいって」