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すこし歪な愛の形
第1章 すこし歪な愛の形
 
 ああ、食べたいなぁおせんべちゃん。

「……」

 不意に訪れる、沈黙。顔を上げると、ちーちゃんが怖い顔でこっちを睨んでいる。

「どしたの、ちーちゃん」

 ふと湯飲みを見てみれば、お茶はもう残りわずか。

「おかわり?」

 僕が湯飲みを差し出すと、ちーちゃんはおっきな溜め息を吐く。

「待ってて、淹れてくる」

 また席を立ち、ちーちゃんはこぼれそうなくらい注がれたお茶を出してきた。なんだか、いつもよりお茶が熱い気がする。よかったねちーちゃん、僕が猫舌じゃなくて。

「おせんべいは、あげないからね」

 今日も平和。多分明日も同じ。少なくとも僕は、そう思っていた。

 ちーちゃんは紙くずをゴミ箱に投げ捨てると、お風呂に入ると言い残して部屋を出て行く。僕も一緒に、なんて言いかけてみたけど、やっぱりやめておいた。ちーちゃんは照れ屋さんだから、そういうの嫌いなんだ。僕は好きなんだけどな。

 ちーちゃん、さっき何を捨てたんだろう。よくよく考えてみれば、僕はちーちゃんの捨てる紙くずに心当たりがない。そこで僕はふと、前にちーちゃんが僕宛てのラブレターを勝手に捨てた事を思い出した。
 
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