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あなたが教えてくれたこと
第7章 7
智哉はまるで用意していたかのように答えた。人柄だけを褒めず、家庭教師として有能なところも付け加える辺りが彼らしい聡明さだった。
「そうか。ならいい」
威厳やプライドを保つことばかりに気を遣っているような節のある正嗣は鷹揚に頷く。
冷静な息子とは正反対に、母の方は気が動転してしまっていた。
夫に何ら疑るところがないのは明らかなのに、まるで自分の裏切りを見透かされているかのように焦ってしまっていた。
「あ、お母さんこぼしてる!」
「えっ、あっ……」
笑う智哉に指摘され、落ちたトマトがソースを跳ね散らかしていたことに気付く。
慌ててハンカチを取り出して拭った。
「しっかりしろよ。智哉の成長は母親であるお前の責任だからな」
「はい。すいません」
夫婦というよりも使用人と主の会話に近い。
智哉は自分の軽口が気まずい会話を生んでしまったと思ったのか、俯いてしまった。
「そうか。ならいい」
威厳やプライドを保つことばかりに気を遣っているような節のある正嗣は鷹揚に頷く。
冷静な息子とは正反対に、母の方は気が動転してしまっていた。
夫に何ら疑るところがないのは明らかなのに、まるで自分の裏切りを見透かされているかのように焦ってしまっていた。
「あ、お母さんこぼしてる!」
「えっ、あっ……」
笑う智哉に指摘され、落ちたトマトがソースを跳ね散らかしていたことに気付く。
慌ててハンカチを取り出して拭った。
「しっかりしろよ。智哉の成長は母親であるお前の責任だからな」
「はい。すいません」
夫婦というよりも使用人と主の会話に近い。
智哉は自分の軽口が気まずい会話を生んでしまったと思ったのか、俯いてしまった。