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あなたが教えてくれたこと
第9章 9
「ねえ、お母さん」
入浴を終えた智哉がバスタオルで髪を拭きながら声を掛けてきた。
「ん? なあに?」
テーブルを拭きながら間延びした声で返す。
智哉は照れたように駆け寄り、母の耳許で囁いた。
「お母さんって、遼平先生のこと、好きでしょ?」
「なっ……!?」
唐突に図星を衝かれ、言葉に詰まった。
「やっぱり……顔が赤くなってるっ!」
「智哉が、へ、変なこと言うからでしょっ……」
指摘されなくても頬の熱さで紅潮してることは分かっていた。
「いいんだよ、隠さなくても」
「隠すも何も。お母さんはお父さんと結婚してるのよ?」
「好きなの? お父さんのこと?」
智哉の目は笑っていなかった。母の本心を確かめようと、真剣な面持ちを向けていた。
その顔に嘘はつけない。たとえ親子でも。
「あのね、智哉。夫婦は好きとか嫌いとか、そういうものだけじゃないの」
嘘はつけないが、本当のことも言えない。
諭すような口調で言い聞かせた。
入浴を終えた智哉がバスタオルで髪を拭きながら声を掛けてきた。
「ん? なあに?」
テーブルを拭きながら間延びした声で返す。
智哉は照れたように駆け寄り、母の耳許で囁いた。
「お母さんって、遼平先生のこと、好きでしょ?」
「なっ……!?」
唐突に図星を衝かれ、言葉に詰まった。
「やっぱり……顔が赤くなってるっ!」
「智哉が、へ、変なこと言うからでしょっ……」
指摘されなくても頬の熱さで紅潮してることは分かっていた。
「いいんだよ、隠さなくても」
「隠すも何も。お母さんはお父さんと結婚してるのよ?」
「好きなの? お父さんのこと?」
智哉の目は笑っていなかった。母の本心を確かめようと、真剣な面持ちを向けていた。
その顔に嘘はつけない。たとえ親子でも。
「あのね、智哉。夫婦は好きとか嫌いとか、そういうものだけじゃないの」
嘘はつけないが、本当のことも言えない。
諭すような口調で言い聞かせた。