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あなたが教えてくれたこと
第2章 2
外の風を浴びたかった。
部屋を出た紫遠は慌ててベランダに出て息を吸う。

「大丈夫、ですか?」
「わっ!?」

背後から声を掛けられ、取り乱したまま振り返ると遼平が不安げな表情で立っていた。
お節介の追い討ちをかけられたようで少し腹が立つ。

「平気ですので。お騒がせしました」

感情を出さずに謝るというのが彼女なりの精一杯の嫌味であり拒絶だった。

「何かお困りのことがあったら、相談して下さい。俺なんかが力になれるか、分かりませんけど」

遼平の瞳は痛みを堪えるように細められていた。それが凄く優しくて、慈しんで貰えているようで、余計に辛かった。

「本当に……何もありませんから」

押し付けがましいけど、これがこの人なりの優しさなんだ。そう思えた紫遠はようやく自然な笑顔を返せた。

少しだけ涼しい風が頬を撫でながら通り抜ける。

「そう。その笑顔」

風は遼平の前髪もそよいで抜ける。

「紫遠さんはその笑顔、よく似合います」
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