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あなたが教えてくれたこと
第1章 1
しかしその顔は年不相応な猛々しさが宿っている。
親から引き継いだ建築会社の二代目社長という看板が、常に彼を引き締めているからだ。
親の代より更に会社を大きく発展させ、今や馬鹿な二代目などと謗るものはいない。

「仕方がないな。躾のためだ、あれを塗ってやろう」

その言葉を聞いた途端、紫遠は目を大きく見開いた。
眼球が溢れそうな無様な表情でも、その美しさに翳りはない。

「そんなっ……それだけはっ……お願いですっ!」

縋りつく声を上げ長い髪を振り乱した。
いくら懇願しても、一度決めたら決して自分を曲げない。そんな夫の性格は知っているが、それでも拒絶せずにはいられなかった。

彼はテーブルから妖しげな小瓶を手に取ると、紫遠の臀部を叩く。

「尻を上げなさい」

逆らえば逆らうほど酷い目に遭わされる。
諦め、静かに目を閉じてお尻を突き出すように上げた。
瞼を閉じるのも力を籠めるのではなく、眠るように淑やかだった。

『どんな境遇でも見苦しく乱れてはいけない。星崎家の正妻として恥じぬ淑女でいなくてはならない』

それは先月他界した義母に言いつけられた言葉である。
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