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第5章 虹

玄関扉を開けると、落ち着いたグレージュっぽい色のフローリングと、正面にオフホワイトの扉。シューズクローゼットみたい。
廊下にはいくつか扉があって、それらがお手洗いやお風呂の水回りなのか、それともお部屋なのかはわからなかった。左手にのびた廊下の突き当たりにお部屋があるらしく。私を迎え入れた玄くんがスリッパを出してくれて、おずおずとついていく。

「そんな警戒しなくても…とって食ったりしないよ。いい加減肩の力ぬいて。」

玄くんが溜息をついた。


…….普通にしているつもりなのに、かなり挙動不振だったんだろう。でも、彼氏でもない一人暮らしの男性の部屋に上がるなんて、初めてのことで。
しかも何か用があって訪ねて来たわけじゃない。
成り行きで連れて来られたようなもので。
この先に何が待ち受けるのか、緊張しない方がおかしいと思う。