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霞草
第9章 無知
「私達はバス停まで見送らせてね。こんなに長く居たお得意様なんだから。」
おばさんの言葉に断りきれず、バス停まで歩く。
森に差し掛かり、振り返って宿をみる。
「来た時は、民家だったらどうしよう。
誰も住んでなかったら…と来たんです。」
おじさんは笑う。
「商売っ気ないからな。」
「野原から一本道と教わり、森に入っても一本道?って、」
「私達が住み始めたころは、はっきりとした道じゃなかったのよ。私達が作った我が家への道」
おばさんが話す。
今まで、たくさん話してきたが、おじさん達とこんなに歩くのは初めてだったと気付いた。
「家出した僕に、これほど良くしてくださって、ありがとうございました。」
僕は感謝でいっぱいだった。
「堅苦しいこと言わずに、楽しかったよ。子供が増えたみたいで…」
話しながらバス停に着いてしまった。
おじさん達はバスが来るまで一緒に待ってくれる。
「おじさん達もたまには霞と、近くでも散歩してゆっくりしてください。」
「そうだな。忙しくなる前に、滝探検には行かなきゃなぁ…」
おじさんが頭を掻いて笑っていると、バスがやってきた。
バスに乗り込み、窓を開けて、会釈する。