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霞草
第4章 出逢い
「じゃあ今晩からお願いします。」

「良かった。一人、部屋で食事するなんて寂しいもの。来た時からずっと気になってたの。」

僕は一目で彼女の虜になった。
彼女は僕が来た時から気にかけてくれていた。

嬉しかった。

でも、彼女と顔を合わせたのは今日が初めてで、
彼女が気にかけてくれているのは、お客として、閉じこもっている僕だ。
それ以上でない。

自分に言い聞かせた。
先のない恋心にブレーキをかけたのだ。


おかみさんが弁当を作ってくれたようで、彼女が持っていた荷物はそれだった。

見晴らしの良いこの場所で昼ご飯となった。

僕は、まだ自分のことを全て話す勇気がなく、
旅に出ようと思ったところから、ここにたどり着いた経緯までを話した。

彼女は僕の目を見て話を聞いていた。

そして、彼女は旅行どころか、電車にすら乗ったことがないと話してくれた。

畑の手入れもあるし、
僕のように予約もせず訪れる客もいるので、家を空けたことがないというのだ。

それと、霞草を届けに行くためにバスを利用するので、
ほとんどのバスの運転手が宿の存在を知っていて、
僕のように行き当たりばったりで宿を探す客に、宿を薦めていることも知った。
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