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霞草
第5章 想い

思い出したように彼女が

「父が気にしていたけど、ご家族に無事でいることを連絡した方がいいのでは…と」

そうだった。それは長居させてもらう条件だった。

「着いたら早速電話してみるよ。」

玄関脇の公衆電話から連絡する。

彼女は夕飯の支度があるからと奥に消える。
今なら、母親しか家にいないだろう。連絡するにはちょうどいい時間帯だ。

予想通り母がでる。

「どこにいるの、何してるの、」

一方的に泣き叫んでいる。

僕は無事でいること、
思いつきで飛び出したが、きちんとした宿にいること、
1.2ヵ月は滞在すること、
必ず戻るので捜さないで欲しいと、冷静に話した。

「せめて連絡先か住所、最寄り駅だけでも教えて欲しい。」

と言われたが、
それでは意味がないし、これからも時々連絡すると言い、受話器を置いた。

何故か

「ごめんなさい、だから帰ってきて、」

と繰り返していた母。
別に、母が謝ることではないのに…。

僕は、部屋に戻る。
何気なくパンフレットを眺めた。
父は内科医、兄貴は外科、医者といっても色々あるのだ。
医者なら何になる?それすら考えていない。

教師かサラリーマン。
サラリーマンて、会社に雇われて何をするのか?それにしても、思い当たる職業がそれしかない。
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