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霞草
第6章 二人の想い
「カップルの心をうつすと言っても、とても静かな湧き水なの。
だから、よほど風の強い日でなければ、水面は穏やかで鏡のようなの。」
彼女が言う。
「来たことあるの?」
「ううん。お客様にお薦めの場所を訊かれる事があるから、説明できるようにしているだけ。」
目的の泉が見える、僕達は手を繋いだまま水面を覗いた。
澄んだ水、底は黒い砂で本当に鏡のようだ。
二人の姿どころか、周りの木々、青い空まで映し出していた。
「綺麗だね。こんなキャッチコピーなくても十分素敵な場所なのに…」
僕は苦笑しながら言った。
彼女も笑っていた。
「湧き水は山の雪解け水と繋がっているんじゃないかと思ってさ。
見てみたかったんだ。」
僕は清水にそっと触れてみる。やはり冷たい。
水面が揺れ動く。
それをみて彼女が
「鏡を乱したら罰当たりじゃないかしら?」
「別に何かが祀られている訳じゃないし、霞も触ってご覧よ。凄く冷たいよ。」
彼女は恐る恐る手を入れる。
僕は彼女の手首を掴んでグッと泉に差し込む。
「きゃあ、…冷たい。」
彼女は頬を膨らませて走り去る。
ちょっとふざけ過ぎたかと反省しながら後を追う。
彼女は看板の前に立っている。

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