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霞草
第6章 二人の想い
「やっぱりあなたの言うとおり、山からの湧き水だったわ。」
彼女は嬉しそうに言う。
看板には、湧き水の源がどこなのか、図解で説明されている。
山の雪解け水が、ゆっくりと地面に岩に染み入り地下水となる。
地下水は、また受け入れる雪解け水の分だけ押し出され、静かな湧き水として染み出ているのだ。
「ここにたどり着くまでにどのくらいの時を経るのかしらね。」
僕は彼女の手を率いて泉に戻る。
繋いだ手を再び泉に沈める。ジンジンとする冷たさにしばらく二人で留まった。
「どのくらいだろうね。でもきっと山の水は濾過されてそのまま、更に清らかになってここに届くんだろうね。」
僕は答えた。
長い時を推し量るように、しばらく繋いだ手を水に浸していた。
刺すような冷たさの中で、彼女の手と重なっている部分だけが温もりを伝える。愛しさに握る手に力がこもる。
それが伝わったのか、
「そろそろ帰りましょうか?」
と、僕を覗き込んで話す彼女の頬は、薄紅色に染まっていた。
僕は黙ったまま頷いた。そして、自転車に戻るまで繋いだ手を離さなかった。