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霞草
第7章 すれ違い
「また、黙っちまったか。
気付きゃいいだけで、あまり深く考え込むな、それとも疲れて口も動かないか?
ちょっと偉そうだったか?」
「いえ、ありがとうございます。
僕、『自分探しの旅』と称して家出してきたんです。
逃げ出してきたんです。言い訳だったのに本当におじさん達に大切なこと教わって。
最初、ここで答えを出して帰らなければと焦ってました。
でも、答えを出すのでなく、答えに向かう力をもらっています。
もう少しここで教えてください。」
「賢い坊主が言うと何でもかっこいいな。
疲れたろ。
あと少しで片付けて俺も上がるから、先に宿に戻ってかみさんの方手伝ってくれないか?
あと、そろそろ家にもまた連絡しておけよ。」
「ありがとうございます。先に上がらせてもらいます。」
僕は、おじさんの優しさに甘えて深々と頭を下げた。
そして早足で宿に戻った。
僕は、宿の電話を借りた。昼間なら母しかいないだろう。
母は泣き叫んで、訳のわからないことをいう。
僕は、しばらくここにいること、また連絡することを伝えた。
母は、何故家出したのか。
どうしてすぐ帰って来ないのか。
何でも僕の好きなようにさせるから。
お父様に直接電話してくれないと困る。
また泣き叫んだ。