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霞草
第7章 すれ違い
「日が落ちる前にはバスに乗らないとだね。」
僕は、ずっとこうしていたかったけど、声をかけた。
「うん、夕食は家で食べると言ってあるから。」
僕は立ち上がり、彼女の手を引っ張って立たせた。
「下りは私が前に乗るね。」
霞が努めて明るく言うのが伝わる。
丘を下りる前にもう一度振り返り景色を見ると、全てが茜色に染まり始めていた。
自転車での下り坂を二人で騒ぎながら行く。
おみやげにケーキ屋により、評判のケーキを買ってバスに乗った。
もう、次の約束はできない。
時間はまだあるけど、絶対とは言えない。
帰りのバスで何を話したらいいのかわからなかった。
「結局、牧場のソフトクリームと街とは、どっちが美味しい?」
霞が話を切り出す。
「バニラは牧場のだね。でも、街のブルーベリーも良かったな。」
他愛もない話をする。
「明日から学校、私はまたこのバスよ。」
そうだ、二人で出かける街は特別なものだけど、霞はこの距離を毎日通学しているんだな。