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霞草
第7章 すれ違い
「化粧はおかしくないよ。
でも、僕はそういう意味で言ったんじゃないんだ。
化粧なんてそのうち誰でもする。
なにもあわてて背伸びする必要なんてないのに…そう思ったんだ。
化粧しないそのままの霞が綺麗だよ。
霞草のように、清楚で可憐な霞が美しいと思ったんだよ。」
霞の瞳から、涙が溢れ、頬をつたう。
「でも、街より都会のあなたの周りには、もっと綺麗な女性がたくさんいるんでしょうね。
霞草は可愛いけど、それだけでは花束にならないもの。」
彼女の頬には次々に涙がこぼれ落ちる。
「そんなことない。ほかの花なんて関係ない。」
「今ここに、霞草しかないから、そう思うだけ…
きっと、都会に戻ったら…私のことも忘れてしまうわ…」
彼女は涙声で言う。
僕は、どうしていいか、何と言えばいいか分からない。
霞をほかの人と比べるなどあり得ないことだが、
離れてしまう、進路さえ決められない自分に、霞との将来を約束することは出来ない。
霞への想いは忘れなければならないと知らされたばかりなのだ。