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霞草
第9章 無知
おじさんに店に挨拶を済ませた報告と、おばさんにケーキのお土産を渡す。
明日帰ると決心したことを伝えようという時に、霞が帰ってきた。
「なあに?お母さん隠し事?」
「違うわよ。夕食にはわかるわよ。」
「本当に?」
霞は部屋に行く。
「テスト勉強しなきゃ、家庭教師さん、明日からお願いします。」
「霞は教えなくても充分できるでしょう。」
約束できない僕は言葉を選んだ。
僕は普段通りを装い、
霞の参考書を借りて見るふりをしながら
霞を盗み見る。
こんなに間近で見るのは最後だろう。
そんな想いを隠して…
夕食ができたと声がかかり食卓につく。
週末に摘んだ野花はなくなり、僕の部屋と同じく霞草だけが飾られていた。