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夢…獏の喰わぬ夢
第6章 過去
下手な慰めを彼女は必要としていない。
でも
「ごめん。話したくないことだったかな。」
と謝った。
「そんなことないわ。たいして大事なことじゃないもの
現実は人から夢を奪う力はないわ。逆にパワーを与える。
逃げるんじゃないわ。活かして糧とするの。それに…」
「それに?」
彼女が強調したいことがあるときは、僕にオウム返しさせる間をわざと作っているのに気づいた。
「おまけにしては、大き過ぎる人に出会ったものね。」
「えっ?」
「どうでもいい大学生活があなたがいるおかげで楽しくなったわ。
現実も充実して十分幸せよ。
夢と現実を行き来するのが楽しいなんて初めてよ。」
「それは良かった。嬉しいな。でも僕は違うかな。」
「えっ」
今度は彼女が驚いた。
「勉強の他に、君と夢との研究という課題が与えられた。難し過ぎて、留年しそうだな。」
「あら、ずーっと留年して研究しつづければいいじゃない。そのうちノーベル賞とれるわよ。」
彼女の話題が楽しく魅力的なのは、沢山の本や映画から吸収したからかな。
その美しさは、美術館でみた美しいものを自分のものにしたからだろう。