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夢…獏の喰わぬ夢
第6章 過去
僕は裸だった。生い茂る森、豊かに実る果実。広い草原に出る。
そこは暖かく、花や蝶や鳥たちがいる。
獰猛な獣と草をはむ動物が平和に寄り添って寝ている。
そこに不似合いな白い金属製の広いテーブルがある。
果物の他に沢山のご馳走がある。
彼女と食事をしよう。彼女を探す。
彼女もここにいるのを知っている。
彼女はいた。中央にある大きな樹の下に。
それは、口にしてはいけないと言われた実をもつ樹。
「君はそれを食べたのか?」
彼女は背を向けたまま
「食べようと思っていたところ」
と答えた。
「本当か?死ぬといわれた実を口にしていないのか?」
「死んでいないもの食べてないわ。」
彼女の肩をつかみこちらを向かせる。
振り向いた彼女は、僕の裸の下半身に目をやり、恥ずかしそうにした。
同時に自分の裸を両手で隠した。
僕には意味のわからない仕草だった。
さっきまで陽の光の下で愛を交わしたのに、何故恥じるのだろう。
彼女の唇から真っ赤な果汁がしたたっている。