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夢…獏の喰わぬ夢
第8章 変化
彼女はずっと無言で上へと飛んでいく。どこへ行こうとしているのか。
雲に囲まれ始めた時、僕は彼女に訊いた。
「どこに行くの?君はどこに行こうとしているの?」
不安が大きくなり、揺れはじめる。
彼女はしっかり飛んでいるのに、グラグラと揺れている。
「ねぇ、終わったよ?ねぇ。」
グラグラとしていたのは、彼女が僕を揺り動かして起こしていたのだ。
「どこに…」
僕は疲れて眠ってしまっていた。
寝ぼけたまま、夢の続きの言葉を口にした。
彼女が物珍しそうに僕を覗き込む。
「君が天使になっていた。空を自由に飛んでいたよ。」
彼女は少し困った顔をしている。
「ねぇ、教室よ、ここ、」
やっと意識がはっきりしてきた。
反対隣りの人が僕が出るのを待っていた。
「ごめんなさい。」
彼女が代わりに謝り、僕を引っ張った。
僕もようやく事態がわかり、急に恥ずかしくなった。
隣りの人にぺこりと頭を下げ、そそくさと教室を後にした。
「ごめん。君に起こされて余計に混乱した。
教室にいるってすっかり忘れるほど眠ってしまってたなんて。」
彼女は笑っていた。
「珍しいわよね。いきなり天使だったなんて言われて恥ずかしくなっちゃった。」
と少し嬉しそうに言った。