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夢…獏の喰わぬ夢
第2章 獏
そのまま一緒に教室に入り隣に座り、誰からみてもカップルに見えるであろう自分達に視線が集まっていなくても、皆に認められた気分だった。
ところが、彼女にはそんな高揚感もないのか、席に着いた途端、いつものように、本や辞書で絶妙な要塞を築き上げ、数分後には眠ってしまった。
午前中、居座っていた夢にまた戻るのか。
はたまた、もっといい夢を見るのか。
まずどうするとそこまで眠り続けられるのか?から訊くべきだろう。
講義中、彼女への質問リストでも作って置くべきだった。彼女と電車に乗ってから後悔した。
何から訊いたらいいのか、自分のどうしようもなく惨めな状態を察知されずに、彼女の気持ちを探るには、どうすればいいのか。
自然と言葉数が少なくなってしまった。
「いつも見る景色でも、一人と二人では違って見えるね。」
また彼女から話し出した。
また、見透かされているように助けられたが、彼女は余裕なのだろうか?
喜ばすつもりか、素直な感想か、からかっているのか。
夢同様、彼女の方が数段上にいて、僕は彼女から丸見えなのに、僕からは彼女がさっぱり見えず、あがいている。
しかも、それが苦しくても、彼女が居ない寂しさに僕が耐えられなくなっているのを、午前中たっぷり思い知られたのだ。