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夢…獏の喰わぬ夢
第1章 春
聞こえるはずもない呟きを、聴かれたような恥ずかしさと、
邪魔とは、ランチに誘った僕自身をも指しているのか、
戸惑いをまた彼女に察知されないようにしなければ、と、
いっぺんに色んな考えが頭の中をよぎりながらも辛うじて
「こうやって話したり、一緒にランチするのは、迷惑だったかな?」
と切り出すことができた。
「いいわよ。いずれにしてもご飯は食べなきゃだし、話をするのも嫌いじゃないわ。あなたのことも。」
お分かりだろうが、僕は恋愛なんてしたことがなく、好きや憧れを超える強い想いを誰かに持ったこともなかった。
この時、僕は、彼女に対しても何の感情もなく、隕石の解明ぐらいに思っていたのだが、
自分の切り出した言葉と彼女の答えは、
まるで、ステディな付き合いを申し込んだようなやり取りとなってしまった。
そして、そのあとステディという関係を超え、恋人と呼ばれる深い仲になっても
始まりが、いつからなのか、僕も彼女も、はっきりとした気持ちを言葉にすることなく、よくわからないままに、
ただ一緒にいることが当たり前の間柄となった。