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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 月光庭園
屋敷に戻り、玄関ホールに脚を踏み入れると、きちんと正装をした橘が大階段前に佇んでいた。
厳しい表情をしていたが、月城の腕の中の梨央を見つけると、目を細め口元に笑みを浮かべた。
「…夜のお散歩でしたか?梨央様」
梨央はにこにこと答える。
「ええ。月城とお月様を見ていたの。橘!あのね。お月様はロンドンにも繋がっているのですって!月城が教えてくれたの。だからお月様を見れば梨央はいつでもお父様にお会いできるの!だから梨央はもう寂しくないの!」
「…左様でございましたか…。それはよろしゅうございましたね。梨央様」
橘は誰にも厳しいが、梨央だけは特別だ。
見た事もないような優しい笑顔を惜しみなく与える。
だから月城は橘の厳しさが梨央への愛情ゆえということもよくわかっていた。
先ほどの橘の叱責もある意味正しいことだということも…。
申し訳なさそうに伏し目がちになる月城には触れずに、橘は梨央に話しかける。
「…梨央様は良い執事見習いをお持ちになりましたね」
月城ははっと顔を上げる。
無邪気に頷く梨央に橘は
「…もう遅うございますから、お早めにお寝みなさいませ。梨央様」
と声をかけると、そのまま階下に降りるべく、二人の前を通り過ぎる。
思わず月城は呼び止める。
「橘さん!」
橘はゆっくりと振り返り、
「…明日は西翼の大掃除だ。忙しくなるからお前も早く寝みなさい」
穏やかな声でそれだけを呟くと、背筋を正したまま階下に消えた。
月城は橘の後ろ姿に深々と一礼した。
そして、腕の中の梨央に笑いかける。
「…さあ、お部屋に戻りましょう。梨央様。今なら窓から月が見えますよ」
梨央は満面の笑みを浮かべ、月城に抱きついた。
厳しい表情をしていたが、月城の腕の中の梨央を見つけると、目を細め口元に笑みを浮かべた。
「…夜のお散歩でしたか?梨央様」
梨央はにこにこと答える。
「ええ。月城とお月様を見ていたの。橘!あのね。お月様はロンドンにも繋がっているのですって!月城が教えてくれたの。だからお月様を見れば梨央はいつでもお父様にお会いできるの!だから梨央はもう寂しくないの!」
「…左様でございましたか…。それはよろしゅうございましたね。梨央様」
橘は誰にも厳しいが、梨央だけは特別だ。
見た事もないような優しい笑顔を惜しみなく与える。
だから月城は橘の厳しさが梨央への愛情ゆえということもよくわかっていた。
先ほどの橘の叱責もある意味正しいことだということも…。
申し訳なさそうに伏し目がちになる月城には触れずに、橘は梨央に話しかける。
「…梨央様は良い執事見習いをお持ちになりましたね」
月城ははっと顔を上げる。
無邪気に頷く梨央に橘は
「…もう遅うございますから、お早めにお寝みなさいませ。梨央様」
と声をかけると、そのまま階下に降りるべく、二人の前を通り過ぎる。
思わず月城は呼び止める。
「橘さん!」
橘はゆっくりと振り返り、
「…明日は西翼の大掃除だ。忙しくなるからお前も早く寝みなさい」
穏やかな声でそれだけを呟くと、背筋を正したまま階下に消えた。
月城は橘の後ろ姿に深々と一礼した。
そして、腕の中の梨央に笑いかける。
「…さあ、お部屋に戻りましょう。梨央様。今なら窓から月が見えますよ」
梨央は満面の笑みを浮かべ、月城に抱きついた。