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新月の闇 満月の光
第4章 動き始める時間
企画書に目を通す俺を、ジッと見詰める社長が、「『mahiro』の要件は見事に無視なのねん……」などと呟いている。
俺は、確かにスルーしたまま、コンセプトや、撮影状況を社長に聞く。
この企画、柚芽に相応しい内容では無い。
色気は、あるに超したことは無いが、
SEXアピールは必要無い。
今回のコンセプトは、正に、SEXアピールそのもの。
宝石の化身扮する、合逆に、宝石(合逆)を付けた『Yume』が彼(宝石)の魅力に酔いしれる。
合逆は、柚芽の表情に、『快感』を出させる為なら、過度のおさわりに成らない限り何でも有り、らしい。
俺は、書類に目を通して、絶句した。
セクハラ紛いじゃん、これ。
「この企画、俺は反対です」
「それは、マネージャーとしてかい? それとも、柚芽の男としてかい?」
姉の眼光が鋭く光る。
「もし、柚芽の男としての意見なら却下だ。マネージャーとして、相手役を替えろと言うなら、考え無い訳でも無い……」
「相手役………、別候補がいるのか? 」
「お前ね、それ、知っててとぼけてるのか? どちらかと言うと、合逆は本命では無い。本命に断られた時の代打だよ……ったく」
頬杖を付いていた社長が、顔の前で指を組む。
漂う違和感。
嵌められた予感。
結局こうなるのか。
俺は、この人の掌で転がされるピエロなんだ……。