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Vesica Pisces
第11章 太陽は静寂に沈む
怖くなんてない

そこには

優しさしかないから

✳︎ ✳︎ ✳︎

お風呂から上がった透の濡れた髪が色香を増幅させる。

下半身はスウェットを着ているけれど、上半身は裸を覆うバスタオルだけだった。

ソファーの端に座った透は乱暴に髪を拭う。

『黙ってたの…ごめんなさい』

「それはいいって」

そう言いながらも明らかな不機嫌がありありと浮かんでいる。

「なんで?」

喉に詰まる記憶の蓋を、透になら晒け出せる。

『10歳位までは何とか声に出せてたの…でも…だんだん音がわからなくなって…それを指摘されたの、変な声だって』

ぎゅっと拳を握る。

『確かめる手段もなくて…誰が本当のことを言ってて、誰が嘘をついてるのかわからなくなって…怖くなって…声を出す事を止めたの』

透は膝に手を組んでじっと話しを聞いている。

『騙す…つもりは無かったの…ごめんなさい』

罰が悪くてそっと視線を上げると、透は相変わらずぶすっと不貞腐れていた。

『何…?』

「俺ね、嘘つく奴大キライなんだよね」

ぐっと胸が詰まる。

「言い訳なんて聞きたくねーし」

透の視線もまた真っ直ぐだ。

「だから…」

透の次の言葉を、唇をじっと見つめた。
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