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Vesica Pisces
第18章 太陽は静寂を誘う
「そのヒールじゃ逃げれないと思うけど」

いつものイタズラな笑顔がそこにあって。

『透のお嫁さんになりたい…っ…!』

「いーよ」

立ち上がった透に抱きしめられて、幸せすぎてまた涙が零れた。

こんなロマンチックなプロポーズを透がするなんて。

いつも通りすぎて、全然気付かなかった。

嬉しくて、でも少しだけ悔しくて透に回した腕に力を込めた。

とんとんと背中を叩かれて顔を上げると、透の目線を向けた方向に未知たちがいた。

未知と和可菜は瞳を潤ませて、嘉登と万里は満足気な笑顔を浮かべていた。

「おめでとう、伽耶ちゃん」

涙で声にならない未知と和可菜に代わって、男性陣がそう言った。

みんなで囲んだデザートは、人数に対して小さくて、一口ずつしか食べられなかったけれど、それでもとても甘かった。

「あーもう理想のプロポーズだよね」

未知と和可菜が口々に透を褒める。

「お前なぁ、ハードル上げすぎだわ」

嘉登と万里は唇を尖らせた。

「お前らもついでに結婚したら?」

無責任な発言を投げかける透に、2組はお互い視線を合わせてイエスともノーとも言えない微妙な表情をすると、透は私の手を引いて罰が悪そうにその場を離れていった。



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