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こじらせてません
第3章 幽閉
あのマンガのように、喉を潤してやろうというわけではない。

アキラが唇を開く。身を捩り、サイドの紐の緒を下唇に触れさせると、意図を察して咥えてくれた。

「ひっぱって」

最初こわばりがあったが、ピンと張られた紐が一度緩むと、あとはスルスルと解けた。
前布がはだけて、見下ろすミサからは茂みがはみだして見えた。

息苦しさに濁る声で、

「はんたいもね」

と、逆側の紐も咥えさせる。

「ああ……」

下肢に貼りついていた布地が喉元へ落ちると、ピクッと、彼の体が震えた。もう吸い取れないほどに蜜が染みていたことが、肌身に伝わってしまっただろうか。

そう思うと、ミサの体の奥も脈動した。
内ももを、ひとすじの雫が伝っているのがわかる。

拭いたい思いが頭をかすめたが、ティッシュは遠かった。いったん拭ってから、戻ってきて、もう一度彼の顔をまたげるかというと、自信がなかった。

ミサは退路を絶った。

「あのね」草むらの真下に彼の顔があって、脳が破裂しそうだった。「……今日は帰らないで」

「え……」
「明日も。ずっと、ここにいて」
「だ、だって……」
「制服はあるじゃん。学校もここから行こう? パンツとか、くつしたとか、ぜんぶ買ってあげる。他に必要なものも、ぜんぶ。だから、おうちには帰らないで」
「……」
「へ、へんじ、してくれないの?」
「でも」
「わかりました、って言わなきゃ、見せてあげない」

またひとつ、雫があふれた。
まばたきをすると、涙粒が真下へ落ちた。

目隠しをしたアキラには、どちらか区別がついただろうか。

『Aくんは、説得に応じてくれました。

私と一緒にいるほうを選んでくれました。

私は、お姉さんでもなければ、義理の母親でもありません。私たちのあいだには、何のしがらみもありません。

だから、Aくんにふさわしいのは、私だと思います。

Aくんは、私のものです。』

……。

「外していいよ」

片手を差し上げたアキラは、アイマスクを額の方へズラした。
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