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こじらせてません
第3章 幽閉


(ぐむむむむむ……)

隣にアキラはおらず、そもそも一人暮らしの部屋ではない。
会社のカフェスペースであるから、またもやミサは思念の中で唸っていた。

外見的には、気だるげにチェアへもたれ、レモネードのカップの縁を指で叩き、眉間を寄せていたのであるから、見る者しだいでは「機嫌が悪い」ように見えた。

別に不機嫌ではなかった。

だがミサの場合、ファーストネームで呼ばれると、そうなりがちであったから、一見すれば誤解を招いても仕方がなかった。

だから何人かの顔見知りが自動販売機を利用しに通りがかったが、軽く挨拶をするだけで、前の席に着いて雑談をしかけてくる者はいなかった。

(どうしよう……)

不機嫌なのではなく、懊悩していた。

昨日もアキラと、ずいぶん仲良くしてしまった。
寝不足である。

四つん這いの彼に背後から手を巡らせて、宣託へと導いた。

その様子にたまらなくなって、前へ回って座って膝を開いた。ありていに言えば、M字開脚というヤツだった。

論理的にも物理的にも彼を丸め込んで、「お返し」をしてもらった。

これまでは横臥してばかりだったが、昨日は初めての座位であったから、二本の指を抽送されながら、花托に潜んだ種実も吸われた。
すると脳髄が熔化して、スーツスカートもブラウスも着込んだまま、彼に論理的にも物理的にも絡んでいってしまった。

連戦が終わると、衣服が惨憺たる有り様となったが、後悔はなかった。
したがって悩んでいたのは、何用でできたかとても言えない乾き染みが飛び散ったスーツを、いかにしてクリーニングに出すかではない。

ちなみに、クリーニングに出す際にこうむるであろう羞恥は、カウンター係員と顔を合わせることによって生ずるのであるから、「お預かりボックス」に投入すれば回避できることだった。

ミサを悩ませている元凶は、毎夜、仲良くしすぎている点だった。

ペットとの信頼関係の証なのだから、悪いことではない。

内省するとそんな思いが浮かんで、いったんの安堵を得るのに、念慮を重ねるとすぐに、憂惧がたれこめてくる……。

「――あ、いたいた。高橋」

声をかけられて顔を上げると、大根が立っていた。

「あ……」
「どうしたよ、そんな顔して」
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