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こじらせてません
第3章 幽閉
8
(ぐむむむむむ……)
隣にアキラはおらず、そもそも一人暮らしの部屋ではない。
会社のカフェスペースであるから、またもやミサは思念の中で唸っていた。
外見的には、気だるげにチェアへもたれ、レモネードのカップの縁を指で叩き、眉間を寄せていたのであるから、見る者しだいでは「機嫌が悪い」ように見えた。
別に不機嫌ではなかった。
だがミサの場合、ファーストネームで呼ばれると、そうなりがちであったから、一見すれば誤解を招いても仕方がなかった。
だから何人かの顔見知りが自動販売機を利用しに通りがかったが、軽く挨拶をするだけで、前の席に着いて雑談をしかけてくる者はいなかった。
(どうしよう……)
不機嫌なのではなく、懊悩していた。
昨日もアキラと、ずいぶん仲良くしてしまった。
寝不足である。
四つん這いの彼に背後から手を巡らせて、宣託へと導いた。
その様子にたまらなくなって、前へ回って座って膝を開いた。ありていに言えば、M字開脚というヤツだった。
論理的にも物理的にも彼を丸め込んで、「お返し」をしてもらった。
これまでは横臥してばかりだったが、昨日は初めての座位であったから、二本の指を抽送されながら、花托に潜んだ種実も吸われた。
すると脳髄が熔化して、スーツスカートもブラウスも着込んだまま、彼に論理的にも物理的にも絡んでいってしまった。
連戦が終わると、衣服が惨憺たる有り様となったが、後悔はなかった。
したがって悩んでいたのは、何用でできたかとても言えない乾き染みが飛び散ったスーツを、いかにしてクリーニングに出すかではない。
ちなみに、クリーニングに出す際にこうむるであろう羞恥は、カウンター係員と顔を合わせることによって生ずるのであるから、「お預かりボックス」に投入すれば回避できることだった。
ミサを悩ませている元凶は、毎夜、仲良くしすぎている点だった。
ペットとの信頼関係の証なのだから、悪いことではない。
内省するとそんな思いが浮かんで、いったんの安堵を得るのに、念慮を重ねるとすぐに、憂惧がたれこめてくる……。
「――あ、いたいた。高橋」
声をかけられて顔を上げると、大根が立っていた。
「あ……」
「どうしたよ、そんな顔して」
(ぐむむむむむ……)
隣にアキラはおらず、そもそも一人暮らしの部屋ではない。
会社のカフェスペースであるから、またもやミサは思念の中で唸っていた。
外見的には、気だるげにチェアへもたれ、レモネードのカップの縁を指で叩き、眉間を寄せていたのであるから、見る者しだいでは「機嫌が悪い」ように見えた。
別に不機嫌ではなかった。
だがミサの場合、ファーストネームで呼ばれると、そうなりがちであったから、一見すれば誤解を招いても仕方がなかった。
だから何人かの顔見知りが自動販売機を利用しに通りがかったが、軽く挨拶をするだけで、前の席に着いて雑談をしかけてくる者はいなかった。
(どうしよう……)
不機嫌なのではなく、懊悩していた。
昨日もアキラと、ずいぶん仲良くしてしまった。
寝不足である。
四つん這いの彼に背後から手を巡らせて、宣託へと導いた。
その様子にたまらなくなって、前へ回って座って膝を開いた。ありていに言えば、M字開脚というヤツだった。
論理的にも物理的にも彼を丸め込んで、「お返し」をしてもらった。
これまでは横臥してばかりだったが、昨日は初めての座位であったから、二本の指を抽送されながら、花托に潜んだ種実も吸われた。
すると脳髄が熔化して、スーツスカートもブラウスも着込んだまま、彼に論理的にも物理的にも絡んでいってしまった。
連戦が終わると、衣服が惨憺たる有り様となったが、後悔はなかった。
したがって悩んでいたのは、何用でできたかとても言えない乾き染みが飛び散ったスーツを、いかにしてクリーニングに出すかではない。
ちなみに、クリーニングに出す際にこうむるであろう羞恥は、カウンター係員と顔を合わせることによって生ずるのであるから、「お預かりボックス」に投入すれば回避できることだった。
ミサを悩ませている元凶は、毎夜、仲良くしすぎている点だった。
ペットとの信頼関係の証なのだから、悪いことではない。
内省するとそんな思いが浮かんで、いったんの安堵を得るのに、念慮を重ねるとすぐに、憂惧がたれこめてくる……。
「――あ、いたいた。高橋」
声をかけられて顔を上げると、大根が立っていた。
「あ……」
「どうしたよ、そんな顔して」