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こじらせてません
第3章 幽閉
真意がわからず、思いを巡らせていると、
「っていうか、予定変更。安原クンは要らないや。チーフ様と二人で行こうかなー」
と、更にミサを惑わせるようなことを言ってきた。
「お、おお! 俺がいるよりも、女子どうしのほうが、盛り上がるぜ、きっと!」
こんどはこっちが救難信号を発しているのに、あろうことか安原は理絵子がつかわせた救命ボートに乗っかっていった。
「あーでも、やっぱり用事が……」
「だから、用事ってなーに?」
「えっと」前略、仕方あるまい。「ぺ、ペット飼い始めて、お留守番させてる、から……」
「へー、一人暮らしの女がペットなんか飼ったら、こじらせちゃわない?」
さすがは理絵子だけあって、何の躊躇もなく風説をぶっこんでくる。
「そ、そうかな。でも、もう飼っちゃったし、一緒にいると、いろいろいいことあるし――」
「あー、でもそっか。もう相当こじらせてるよね、チーフ様」
理絵子はミサを遮ると、安原を解放し、テーブルに腰掛けたまま腕を組んでみせた。いくらミサに身長があるとはいえ、理絵子のほうが見下ろす形になっている。
なぜに突然現れて、こんな高圧的な態度に出られ、「こじらせてる」なんていう的外れの評をいただかなければならないのか。そしてなぜに安原はこんなにも頼りないのか。
だんだん腹が立ってきて、会社でありながら――最近多いような気がするが――罵倒の衝動が起こった。
「いいじゃん、アキラくんも連れてきてもいいよ? 一緒に入れるお店、知ってるし」
(――っ!!)
息を吸い込んだところへ、そう言われたから息を呑み、つまり吸い込み続けることとなって詰まり、会話上は絶句する形となった。
「アキラ? ペットにフツーの男の子みたいな名前つけるんだな、高橋」
ポンコツめ、つっこむところはそこではない。
そもそもなぜ、理絵子がペットの名前を知っているのか、不思議に思わないのか。
なおかつ、アキラはフツーではない。絶倫だ。
お前みたいな大根とは役者がちがう。
お役立ち度も雲泥の差だ。
……いや落ち着こう。本当に、なぜ理絵子はペットの名を知っている?
「ねー、話、聞かせてよ。イロイロ」
安原からは死角になっているのをいいことに、理絵子の眼光は不気味にギラついていた。
「っていうか、予定変更。安原クンは要らないや。チーフ様と二人で行こうかなー」
と、更にミサを惑わせるようなことを言ってきた。
「お、おお! 俺がいるよりも、女子どうしのほうが、盛り上がるぜ、きっと!」
こんどはこっちが救難信号を発しているのに、あろうことか安原は理絵子がつかわせた救命ボートに乗っかっていった。
「あーでも、やっぱり用事が……」
「だから、用事ってなーに?」
「えっと」前略、仕方あるまい。「ぺ、ペット飼い始めて、お留守番させてる、から……」
「へー、一人暮らしの女がペットなんか飼ったら、こじらせちゃわない?」
さすがは理絵子だけあって、何の躊躇もなく風説をぶっこんでくる。
「そ、そうかな。でも、もう飼っちゃったし、一緒にいると、いろいろいいことあるし――」
「あー、でもそっか。もう相当こじらせてるよね、チーフ様」
理絵子はミサを遮ると、安原を解放し、テーブルに腰掛けたまま腕を組んでみせた。いくらミサに身長があるとはいえ、理絵子のほうが見下ろす形になっている。
なぜに突然現れて、こんな高圧的な態度に出られ、「こじらせてる」なんていう的外れの評をいただかなければならないのか。そしてなぜに安原はこんなにも頼りないのか。
だんだん腹が立ってきて、会社でありながら――最近多いような気がするが――罵倒の衝動が起こった。
「いいじゃん、アキラくんも連れてきてもいいよ? 一緒に入れるお店、知ってるし」
(――っ!!)
息を吸い込んだところへ、そう言われたから息を呑み、つまり吸い込み続けることとなって詰まり、会話上は絶句する形となった。
「アキラ? ペットにフツーの男の子みたいな名前つけるんだな、高橋」
ポンコツめ、つっこむところはそこではない。
そもそもなぜ、理絵子がペットの名前を知っているのか、不思議に思わないのか。
なおかつ、アキラはフツーではない。絶倫だ。
お前みたいな大根とは役者がちがう。
お役立ち度も雲泥の差だ。
……いや落ち着こう。本当に、なぜ理絵子はペットの名を知っている?
「ねー、話、聞かせてよ。イロイロ」
安原からは死角になっているのをいいことに、理絵子の眼光は不気味にギラついていた。