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こじらせてません
第4章 拘繋
「そんな女だって思ってたの? そんなことして、ミサをおとしいれたって何にもならない。……私、今年、試験受けるの。昇格したら同じチーフなんだから、ミサのことチーフ様、なんて呼んだらおかしいじゃん、って話」
「あ、受けるんだ……」
「そう。いつまでもバカにしないで。好敵手相手に、実力で勝ってみせるし」
「べ、べつに、バカになんかしてない」

一気にまくし立てられた上に、「ライバル」に、ビックリする漢字があてられていたような気がして、ミサは戸惑うあまり、そう言うしかなかった。

「――別にいいんじゃん? ちゃんと婚約者と別れてるんでしょ?」

戸惑っているところへ、意外な答えがが返ってきた。

「そ、そうなんだけど」
「家にも帰さないなんて、よっぽど惚れたんだ」
「ほ、惚れた、ってなんだか言い方、変……」
「言い方だけにこだわるってことは、本気で惚れたんだね。……でも、しょうがないじゃんねー? たまたま相手が高校生ってだけで。別に私はおかしいことだって思わないし。でも仕事やめたら、今みたいな生活できなくなるよ。やめとけば? 困るでしょ。……だから会社には黙っておいてあげる」

おお。
さすがは、ずっとF大系列。
受け入れられるのか。

「あ、ありがと……」

礼を言う必要はないのであるが、言ってしまった。

こちらが礼を言えば、自尊心がくすぐられ、理絵子は勝ち誇った笑みの一つでも見せるのかと思ったが、ミサのほうを見ずにワインを一口飲んだだけだった。

「高校生って、スゴそうだよね。ミサってマジメだし、あんまりなのかな、って思ってたけど、意外にそういう人のほうが、ヤラシーこといっぱいしてるって言うじゃんね」
「ちょ、理絵子、声が大きい……」
「声の大きさだけにこだわるってことは、ヤラシーこといっぱいしてるんだ。……スゴいね。ラブラブじゃん? アキラくんがいなきゃもうダメ、って感じ?」

そんな局面にものすごく心当たりがあるが、自念するのと、人から言われるのとでは恥ずかしさがまったく違う。

……いや照れている場合ではない。
なればこそますます、理絵子がこうやってマンツー食事に誘ってきた理由がわからない。
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