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こじらせてません
第1章 捕縛
1
女性の生涯未婚率は、14.1%だ。
もっとも「生涯」という言葉には惑わされてはいけない。五十歳までに婚姻歴が一度もない人を勘定したものをいう。
もう少し細かく見てみると、二十代前半の女性の未婚率は91.4%。二十代後半になるとこれが61.3%となり、三十代に入ると34.6%となる。
そして十年前、三十代前半の未婚率は32.0%だった。今の四十代前半が19.3%。三十を過ぎたあたりで独身の女性が五人いたなら、三人は四十を過ぎたあたりでも結婚をしていない。
さらに五歳進めてみると、十年前の三十代後半が18.4%で、今の四十代後半が16.2%。アラフォーで結婚をしなかった人、十人のうち、アラフィフまでに結婚をした人は、一人だけだ。
そういうことになる。
なるほど。
ご丁寧にありがとうございました。
電車に乗っている間に調べた情報は、実に数字の解釈のしがいがあって、終えるのに駅から自宅へ歩く半ばまでかかってしまった。
歩きスマホは危険ではあるが、容易ならざる事態であったのだから許されたい。むしろ夜道の一人歩きにおいてバックライトは明かりとなるし、かつ有事の際には素早く通報できるのだから、防犯面では良しと考えることもできる。
というわけで、携帯をしまわず手の中に握ったまま、バッグを肩にかけなおすと、踵音を立てて歩いた。
「美しい歩き方」は、わかっている。
自分の脚の長さも、わかっている。
顔を上げて背すじを伸ばし、キャットウォークほど大袈裟ではないものの、地面に伸びる直線を意識しながら歩いている。膝頭を出したタイトスカートで、スリットが広がるほど歩様が左右へ開いてしまうと、高身長であればあるほど後ろ姿が不格好になり、見る者を残念に思わせてしまう。
よく、わかっている。疾に慣れた。
無事にマンションに着いた。口元に微笑みをたたえて会釈すると、敬礼をした警備員が中年のくせに可愛らしく萎縮した。出で立ちに不備はないようだ。挨拶しかしたことはないが、この人は毎日のように自分に見惚れてくる。
(あー、お腹すいたなぁ)
女性の生涯未婚率は、14.1%だ。
もっとも「生涯」という言葉には惑わされてはいけない。五十歳までに婚姻歴が一度もない人を勘定したものをいう。
もう少し細かく見てみると、二十代前半の女性の未婚率は91.4%。二十代後半になるとこれが61.3%となり、三十代に入ると34.6%となる。
そして十年前、三十代前半の未婚率は32.0%だった。今の四十代前半が19.3%。三十を過ぎたあたりで独身の女性が五人いたなら、三人は四十を過ぎたあたりでも結婚をしていない。
さらに五歳進めてみると、十年前の三十代後半が18.4%で、今の四十代後半が16.2%。アラフォーで結婚をしなかった人、十人のうち、アラフィフまでに結婚をした人は、一人だけだ。
そういうことになる。
なるほど。
ご丁寧にありがとうございました。
電車に乗っている間に調べた情報は、実に数字の解釈のしがいがあって、終えるのに駅から自宅へ歩く半ばまでかかってしまった。
歩きスマホは危険ではあるが、容易ならざる事態であったのだから許されたい。むしろ夜道の一人歩きにおいてバックライトは明かりとなるし、かつ有事の際には素早く通報できるのだから、防犯面では良しと考えることもできる。
というわけで、携帯をしまわず手の中に握ったまま、バッグを肩にかけなおすと、踵音を立てて歩いた。
「美しい歩き方」は、わかっている。
自分の脚の長さも、わかっている。
顔を上げて背すじを伸ばし、キャットウォークほど大袈裟ではないものの、地面に伸びる直線を意識しながら歩いている。膝頭を出したタイトスカートで、スリットが広がるほど歩様が左右へ開いてしまうと、高身長であればあるほど後ろ姿が不格好になり、見る者を残念に思わせてしまう。
よく、わかっている。疾に慣れた。
無事にマンションに着いた。口元に微笑みをたたえて会釈すると、敬礼をした警備員が中年のくせに可愛らしく萎縮した。出で立ちに不備はないようだ。挨拶しかしたことはないが、この人は毎日のように自分に見惚れてくる。
(あー、お腹すいたなぁ)