この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
こじらせてません
第1章 捕縛
いかなる場においても、ある経験が、それそのまま再度起こるということはありえない。したがって成功経験、失敗経験いずれにおいても、それを導いた原因は、それそのまま把握していても役に立たない。因果構造をはじめとした本質性を見出し、セオリー化してこそ、次の経験へ活かすことができる。成長を促すのであれば、その方法が正しいか、Active Experimentation、すなわち試行を行う。"Active"、である。「意図的に」だ。そうして新たな経験を得て、また、省察を行う。
このたび自分は、考えられうる最高の男性で初体験を終えることができた。これは成功経験と言っていい。連れ込んだ手口を要約すれば、「最終日を利用して、発揚した大人の魅力で、少年をたぶらかした」といったところだが、とりもなおさずこれは要約にとどまり、抽象化ではない。自分はもう、不可逆な経路を渡りきったのである。初体験をセオリー化したところで、いったい今後、何の経験に役立ち、どこにおいて試行するというのだろう。それよりも、他の何物にも代えがたい、誰にも触れられぬ、唯一無二で不可侵の経験として、末永く長期記憶の聖域に保存しておきたかった。となれば、もはやHowをあらためる必要はないし、というか、いま聞き捨てならない言葉が耳に飛び込んできた。
「……ん?」
「好きです。……つきあってください」
……。
(……生まれて初めて、彼氏、できた!)
では、あのハゲは何だったのか、という疑問は微塵にも起こらなかった。
起こらないことが、再帰的にあのハゲを定義づけていた。
このたび自分は、考えられうる最高の男性で初体験を終えることができた。これは成功経験と言っていい。連れ込んだ手口を要約すれば、「最終日を利用して、発揚した大人の魅力で、少年をたぶらかした」といったところだが、とりもなおさずこれは要約にとどまり、抽象化ではない。自分はもう、不可逆な経路を渡りきったのである。初体験をセオリー化したところで、いったい今後、何の経験に役立ち、どこにおいて試行するというのだろう。それよりも、他の何物にも代えがたい、誰にも触れられぬ、唯一無二で不可侵の経験として、末永く長期記憶の聖域に保存しておきたかった。となれば、もはやHowをあらためる必要はないし、というか、いま聞き捨てならない言葉が耳に飛び込んできた。
「……ん?」
「好きです。……つきあってください」
……。
(……生まれて初めて、彼氏、できた!)
では、あのハゲは何だったのか、という疑問は微塵にも起こらなかった。
起こらないことが、再帰的にあのハゲを定義づけていた。