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薔薇色に変えて
第9章 薔薇色に変わる






一年後、「喫茶・薔薇色」の店主が代わった。

小此木さんは自分が元気なうちに店を譲っておきたいと、
大切に守り続けてきた「薔薇色」を
修二さんと私に託したのだ。

夫婦になった私達に。

でも店に出るのは修二さんだけで、私はまだ仕事を続けている。
ここまでがんばってきたのだから、定年まで勤め上げたい。
その考えに修二さんが賛成してくれたのだ。

それに、私が手伝うまでもない。
毎日、小此木さんが店にいるのだから。

カウンターの端の席はご隠居となった小此木さんの指定席。
だけどじっと座っていることに慣れていない小此木さんは、
結局今まで通り店の中で動き回っている。

でもその光景が、一番自然に見える。
愛おしそうにサイフォンを眺め、語りかけるような口元を見せながら豆を挽く、
品の良い年寄りの姿は、いつまでもカウンターの中で輝いていてほしい。

いつか・・歴史は変わり目を迎える。
その時に明るい未来の光を感じられるように、毎日を精一杯生きよう・・


今日も薔薇色のコーヒーは、
私の、この店を愛するすべての客達の、
鼻腔に神秘の香りを届けてくれる。


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