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薔薇色に変えて
第2章 寂しそうな客

フライパンから立ちのぼる湯気が目の前に広がるとすぐ、
昔懐かしい楕円形のアルミの皿に盛りつけられたナポリタンが差し出された。

「今日はサービスでこれもつけちゃうよ」

言われて皿を覗き込むと、細長いソーセージが添えられていた。

「うわぁめずらしい!大サービスね」

「ちょっと、めずらしいとか言わないでよ。
 いつもサービス満点でしょ?この店は」

笑いを含んだ小此木さんの声は、私にだけ向けられたものじゃない、とすぐに気づいた。
テーブル席に座る初めての客に届くように、そう私には思えたし、
きっと小此木さんもそのつもりだったのだと思う。

この店は、常連でも通りすがりでも、
コーヒーを楽しんでいる間は誰もの憩いの場になればいいとのマスターの想いがある。
ほんの一瞬でも縁があってこの店に入りコーヒーを味わってくれる。
長い短いにかかわらず、出会いと縁を大切にしているんだと、
小此木さんはよく話している。


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