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薔薇色に変えて
第2章 寂しそうな客
その気持ちは通じたのか、今一度男が頭をあげた。
そして、ほんの一瞬だったがかすかに口元を緩めたのが見えた。

それからゆっくりと男は立ち上がり、
テーブルの上の伝票を手に私たちのほうへと近づいてきた。

「お願いします」

男の声は、色気のある声だった。
そして、男の全貌が明らかになった。
整った顔立ちだが瞳に力がなく、少し頬がこけている。
やつれている、といった印象を持った。

財布の中から千円札を取り出し伝票と一緒に小此木さんに手渡す。

「ありがとうございました。よかったらまた寄ってくださいね」

おつりを男の手の中におさめながらにっこりと笑う年寄りに、
男は少しだけ微笑んで、はい、と小さく答えた。



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