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禁煙チュウ
第9章 はじめて その2
「やーらかい」
笑った気配の声のまま、宮田さんが漏らす。
また急速に心音が高まる。
耳が動いてるんじゃないかってくらいドクドク脈打つ。

正直頭の中で、「胸を触られている」という事が先行して、宮田さんの手の動きに感覚が追い付かない。
覚悟してきたつもりだったけど、肌に直に触れられて、はじめての場所を紐解かれ、小さな混乱が頭の中で弾けた。

「んんん」
わたしは呻って宮田さんにしがみつく。
「石井?」
あんまり強く抱きついたら変に思われる。
そう思っても力が抜けない。

宮田さんの手が胸から離れる。服の中から出ていって、背中に回る。
「……大丈夫?」
真っ暗な部屋の中で宮田さんの声だけが聞こえる。
なんだか姿の見えない獣みたい。
……あぁ、そうか。

わたしは再び体を捻って間接照明を灯した。
ぱっと周りが明るくなって、まぶしさに目を閉じた。
「う、」
宮田さんも顔を伏せる気配。
手探りでスイッチを探し当てると、また消してしまった。

「あ……」
「つけたいの?」
「はい……顔が見えないと、不安で」
宮田さんは「あー、なるほど」と言って、足元に移動した。
しばらくごそごそすると、また部屋が明るくなった。

といっても本当に薄く、ホタルの明かりみたいに淡く。
よく見ると、ロフトの低い天井に、星空が現れていた。
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